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内面とか外面とか
 読んでいて心地よいお話ではなかったのです。

 そして、冒頭から、読みたくなくなる人もいるかもしれません。
 気分を害するかたもいるかもしれませんが。

 冒頭は、

 きりこは、ぶすである。


 です。

 ぶすだと一般的に思われるような外見の女性が物語の中心です。
 性描写や性犯罪も取り扱われていたりして、決して気分良くハッピーな気持ちで読める物語ではない。
 けれど、ところどころ、心に留めたいと感じる言葉がありました。

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『 きりこについて 』 ( 西加奈子さん / 角川書店 )

 一体どんな話やろ、と読み続かせられるのは、

『 実は猫はものすごい知性を持った動物である 』 というちょっとファンタジーな要素があるから。

 猫がね、「 一体 人間程度のもんが、何さまやねん! 」 という調子で毒づいていたりします。

 そんな猫視点の人間への呆れた感情が現れた言葉。

『 ・・・ 談合し、仲間はずれをし、誤魔化し、他者を陥れ、恐れから爆撃をする、
 そういった人間たちの方が、猫よりも優秀であるのだ、というような考え方と同じくらい、
 馬鹿らしいことである。 ・・・』

 政治家を誰も彼も 「 先生、先生 」 と調子にのせちゃてたらいけませんよね。

「 抑止力を持った国だけが戦争し 」 という 確か新聞投稿の言葉を思い出しました。

 関係ないですけど。


 主人公 きりこ の言葉。

 自分のしたいことを、叶えてあげるんは、
 自分しかおらん。
 これは、きりこが自分自身に対しても、言い聞かせた言葉だった。
「 ぶすやのに、あんな服着て。」
 あんな言葉に、屈することはなかった。
 彼らは、「 きりこ 」 ではない。きりこは、きりこ以外、誰でもない。

 ・・・


 主人公 きりこ は、
 大人になってから、初恋の男の子に再会します。

 こうた君は、きりこの好きな、こうた君ではなかった。
 色気のある垂れ目や、 ・・・ さらさらと風になびく髪の毛は、もうそこにはなかった。代わり、坊主頭に流星のように引っ張られた傷や、・・・ 歪んだ口があった。
 きりこは驚いた。

 これほど容姿が変わってしまったことではなく、これほど容姿が変わっても、こうた君が 「 こうた君 」 であり続けているということに、驚いたのだ。

 それは、きりこが散々実感してきたことのはずだった。
 体は容れ物に過ぎず、「 きりこ 」 は 「 きりこ 」 以外の何者でもない、 「 ちせちゃん 」 は 「 ちせちゃん 」 だし、「 押谷さん 」 は 「 押谷さん 」 である、と。

 でも、今目の前にいる 「 こうた君 」 は 「 こうた君 」 だけれども、自分はどうしても、「 こうた君 」 を見て、心から、がっかりしてしまっているのだった。
 あの 「 こうた君 」 は、自分の好きな 「 こうた君 」 ではない。
 ・・・

 そのとき、きりこは気づいた。


 自分だって、「 容れ物 」 にとらわれていた。

 こうた君を見ていたのではない。私は、こうた君の 「 容れ物 」 を、見ていたのだ。


 ・・・

「 うちは、『 ぶす 』 で、良かったんや!こうた君を恰好いいかどうかだけで見て、こうた君に 『 可愛い 』 て言われてたら、な、うちはずっと、『 可愛い 』 か そうじゃないかの基準だけで、いきていくことになってたんやと、思う! 」

 ・・・

「 ほんで今、こうた君に会わんかったら、 」

「 うちは、ずっと、人間には 『 中身 』 しかないんやって、思ってたと思う!

 ・・・

「 うちは、容れ物も、中身も込みで、うち、なんやな。 」

「 今まで、うちが経験してきたうちの人生すべてで、うち、なんやな! 」


 えらい長いこと引用してしまいました。すみません。
 西加奈子さんが、物語の中で伝えたかったことは、きっとこの部分じゃないのかな、って僕は思いました。

 色んな事を経験しながら、自分の人生によって自分が作られていきます。全て肯定してあげないとね。
 自分の人生なんだから。

 久しぶりにお酒を飲んで、酔ってます。
 


おきてがみ
by new-ikumen | 2014-07-08 22:25 | 人生を豊かにする読書


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