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過去は変えられない、って言うけれど。
 他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる、とか、言いますよね。

 それとはちょっと正反対だけれど、なんか良いなと思う言葉に出逢いました。

過去は変えられない、って言うけれど。_c0259834_213486.jpg

『 希望ヶ丘の人びと 』 ( 重松清さん / 小学館 )

「 希望ヶ丘 」 と名付けられた、かつてのニュータウンに暮らす人びとの物語。

 ニュータウンに越してくる人たちは、だいたい年齢層や家族構成、生活レベルも似通ったもので、
 その人たちが創る街というのは、どこか不自然な気がする、とか思いつつ、暮らす人たち。
 そして、世代交代しつつある、かつてのニュータウン。

 希望ヶ丘で育ったという妻を亡くした中年男性が主人公。

 ひょんなことから、妻の同級生と、色々と知り合って、関わりあっていきます。

 孤高のツッパリ、伝説をいくつも作った男、エーちゃん、

 元いじめられっ子?の元生徒会長、チクリ。

 主人公の元妻は、どうやら彼らから好意を持たれていたということに、主人公は気が付きます。
 そして、自分の元妻だ、ということを、話すタイミングを逸してしまうのです。


 元いじめられっ子で、あまり友達もいなかったチクリですが、
 マドンナ的存在だった圭子ちゃんは、僕と仲良しだった、とか、
 ツッパリのエーちゃんとも仲が良かったとか、過去を美化して話してしまうんですね。

 主人公は、実は別の同級生から、チクリがみんなから好かれた存在ではなかったということを、聞いて知っています。ちょっと、哀れに思いつつも、彼に対しての言葉が素敵でした。

 哀愁というか、しみじみというか、僕的には優しいと感じましたが、いかがでしょう。

 過去にすがる---。
 いいじゃないか、と自分に言い聞かせた。
 過去はもう変えられない。若い頃はそう思っていた。
 だからこそ今日を精一杯生きて、明日への夢や希望を忘れてはならないんだ、と。

 けれど、人生の半ばを過ぎて見ると、少しずつわかってくる。
 キツい現在をひいこら言いながら生きて、未来に確たる希望も持てないオトナにとって、自分の思い通りになるものは、もしかしたら過去の記憶だけなのかもしれないのだ。


 自分の元妻が好意を寄せていたのはどうやら別の人だと分かっているけれど、
 まぁ、こいつのことだって言わせてやればいいじゃないか、
 いじめられっ子だったなんて過去は隠させてやればいいじゃないか、と。

 ん~、なんかちょっと、深い。



 それから、中年になった今も格好良い、エーちゃんが語る、『 もしも 』 の話

 おとなが考える 『 もしも 』 っていうのは、残酷なものだと思わないか?

 子どもの 『 もしも 』 は未来に向いてる。可能性だ。
 もしもボクに翼があったら、もしもタイムマシンがあれば、もしもJリーガーになれたら・・・・・・ってな。
 でも、おとなの 『 もしも 』 は過去にしか向かわない。後悔や愚痴だ。
 もしもあのとき、ああしてれば、もしもあのとき、ああしてなければ・・・・・・ってことだろ?

 でもな

 現実は、ここにあるんだ。

『 もしも 』 を考えるってことは、いまの現実を否定するってことだ。俺は嫌だ、そんなのは。
 どんな現実だろうと、いまここにあるものは、俺は認める・・・・・・


 うん、大きな志と前向きなもしも、を考えて生活したいな。


 写真を見て頂ければ分かると思いますが、結構厚い本です。

 物語なので、主人公の周りでは色々なトラブルが起こります。(まぁ、現実にもありがちなことですが)

 娘は転校先で、なかなか馴染めません。いじめや不良、型に填めようとする教師、などなど、
 色々なことがテーマになってます。

 そして、要所要所で、エーちゃんが格好良い!

 正直、前半は盛り上がりに欠けましたが、1/3くらいから面白かったです。
 最後は、不覚にもちょっと涙が浮かんでしまった。


 PTAとか、子供の友達関係とか、悩む前に、読んでみてはいかがかなと思う本でした。
 モヤモヤした物語かと思いましたが、とてもスッキリした気分で読み終えました。


おきてがみ
by new-ikumen | 2014-08-06 21:36 | 人生を豊かにする読書


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